PRINCESS WALTZ

グラフィック
A−
シナリオ
D
文章
B−
操作性
C
サウンド
C+
H度
D
総合評価
C

ByPULLTOP

 

 王子の后を決めるためのプリンセス達の戦い「PRINCESS WALTZ」。宴の幕が開けその参加者の一人であるクリス=ノースフィールドと主人公の邂逅から物語りは始まります。
 タイトル通り、ストーリーはPRINCESS WALTZという名の[参加資格:王女 優勝商品:后の座] というバトルロイヤルを軸にして進み、また随所にカードバトルが挿入される仕組みになっています。
 サウンド、グラフィック、キャラクター造詣それぞれがそれなりに高い水準にある作品ですが、それが余計に「勿体無い」という印象を抱かせます。
 まずカードバトルですが、正直苦し紛れの付け焼刃をいう印象を抱かずにはいれません。具体的には分岐も選択肢も無い物語に起伏を付けるためだけに用意されただけのような印象を受けます。バトルと言っても雑魚との戦いが大半で、勝敗もストーリーに一切影響を与えず、ステータス等引き継がれないためやりこみ要素も皆無です。難易度としてもかなり低い部類に入るでしょう。コツさえ掴めばまず負けません。
 そして肝心のストーリーですが、設定自体には興味惹かれるものが多々あっただけにこれほど「期待はずれ」という印象を抱かせてくれた作品もあまりありません。
 なんといっても問題だったのは各ヒロインの位置付けでしょうか。そもそもギャルゲーに置いてヒロインが複数用意されているのは千差万別な人の好みに対応するためです。特に主人公が無個性な一人称視点で物語を読ませるタイプの作品ではこの傾向が強く、言わばプレイヤーは主人公に自分を投影させゲーム中に於いて擬似恋愛をしたりする訳です。しかしこの作品の場合、メインヒロインのクリスに対する比重が大きすぎ、他のヒロインの扱いが蔑ろにされている為、クリス以外のヒロインに対して思い入れが強いプレイヤーはどうしてもストーリーに不満感を感じてしまうのではと思わせます。
 ストーリーは一本道でクリスルートと呼んでも差し支えなく、他のヒロインはHシーン回収の為だけに小さい分岐が設けられていますがエンディングも個別の物が無く肩透かしの印象は拭えません。もし、ストーリー序盤か、遅くとも中盤に於いて各ヒロインに対応する分岐があり、それに対応する形でヒロイン達のバトルの組み合わせや勝敗、主人公のクリスに対する対応などが変化していたとしたら、作品に対する評価も大きく変わっていたことでしょう。
 Hシーンは数、質共に低いと言わざるを得ず、取って付けたような印象を抱かせます。少なくともこれ目当てで購入すると後悔します。

 広げた大風呂敷の収集を付ける事が出来なかった。総評すればそんな所でしょうか。元々今まではもっとコンパクトな作品を作ってきたブランドなだけに、慣れない事をした結果としてはこの程度で致し方なかったのかもしれません。極力好意的に評価してそんなところでしょう。

 以下ネタばれ

 取り合えず、何故にアンジェラはガーターベルトでは無くあんなグンゼみたいなババ臭い地味な下着なのかと小一時間。(使いまわし。管理人はガーターベルトを推進しています)
 特に男性原画家に傾向が強いのですが、下着の描写が適当過ぎやしないかと。しまパンだけでなく、もっと他の下着も気合入れて真面目に描けと。……どうでもいいですかそうですか。
 プレイしていてちょっと気になったのが、攻略可能ヒロインとそれ以外のキャラの立ち絵のクオリティーの違い。見ただけで誰が攻略出来るか判断できるし……。折角のシナリオ(というほどでもないですが)が絵の所為でネタばれぎみになっていたのはちょっと滑稽でした。
 それと、なんの流行りかしりませんがあのボーイズラブホモっぽい雰囲気はどうしてもいただけませんでした。しかし、クリスが女だって事なんて、プレイヤーの九割九分は一目見ただけで判ったと思いますが、だからって説明書でその事をばらさなくても良かったのではと思います。ちゃんと騙そうとする努力はしろよと。ま、メインヒロインが男装という時点で色々と間違っている気はしますが……。
 元々メインヒロインというのは優遇されすぎていてあまり好きではない私ですが、今作は特にその傾向が強かったです。ヒロイン個人の性格や外見ではなく、置かれている立場に不快感を覚え、それによってヒロイン個人のイメージも悪化して行くという……。プレイヤーがどのヒロインを選びたくても主人公はクリス一筋ですからね。他のヒロインも十分に魅力的な設定を持っていただけに、それがシナリオに投影されていなかったのが残念でなりません。ルンルンのシナリオ、もっと見たかったんだけどなあ……。主人公の「二号さん」発言を受け止めた時の普段の言動と外見の子供っぽさからは想像も出来ないような年上の包容力。ベタベタなキスシーンと並んでこの二つが私の中のPRINCESS WALTベストシーンでした。ぶちゃけクリスとかそのままいなくなればよかったのに。

 PULLTOPというブランドの印象に合わない今作、上手くいけばブランドイメージを覆すものだったかもしれませんが、失敗だったと言って差し支えないでしょう。面白い作品を作れる事は判っているのですから次回作はまた原点に返ったPULLTOPらしい作品を期待してしまいます。